2004年09月24日 (金)

束の間の屏風対面

実家では説惇さんが見えるということもあって、先週末に豊田さんたちが未済工事チェックで来られた際に『壁畫に集ふ』の梱包を解き、私抜きで屏風を立てるのを手伝ってもらったらしい。私が到着したときには屏風は二曲二双30度/150度のW字状態で展示壁面側に立てられ、1、2Fはそれなりに体裁取り繕う感じで片付けられていた(母は体裁取り繕う片付けなら得意なのだ)。

さて、この家の計画当初から我々の希望用件に絶対必要なものとして第一義にあげていたのが「ギャラリー(1階:3.7×2.7m の丸井金猊屏風が何よりも映えるよう)」(※) である。そういう意味ではファサードの立ち上がりや古材の再利用以上に『壁畫に集ふ』がどう見えるかは最重要テーマで、それに臨む瞬間は固唾を呑まずにはいられなかった。まあ、実際のところは体裁取り繕って片付けられたといっても、床には養生用の段ボールが敷かれ、両サイドには1Fに置いておく他ない家具・建具類が残っていたので、まだまだ屏風が屹立したとき、その壁面側空間にどれほどの緊張感が生まれるのかといったレベルで見ることはできなかったが、照明を点けた段階でそれなりの満足感が得られたことは確かだ。

豊田さんらと屏風を立てたというその晩に母からもらった電話では、屏風を広げるまでの豊田さんは非常に険しい顔をされていて、いざそれが空間に落ち着いてようやくいつもの穏やかな表情に戻られたらしい。豊田さんにとっても、この1F空間は屏風があって初めて成立するものだという認識のもとにあったのだ。そうした理解の上で設計に臨まれているというのは、施主にとっても屏風にとっても本当に嬉しい話だ。

それにしても屏風専用で考えたウォールウォッシャ(※) の照明は大正解だったと思う。これまで幾つかのギャラリー等でこの屏風を展示してきたが、常に不満の種はスポットライトによる照明だったからだ。これだけの大きさの屏風だとどうしても一面均等に光を当てることができない。また白熱灯の暖かい光色がどうもこの絵にはそぐわない感じがあったのだ。そうした問題群をウォールウォッシャはまるごと解決してくれた。ましてや美博用蛍光ランプで紫外線もカットされ、ランニングコストもかからないのだから。。

夕方、雨漏りチェックで見えた山本さんが、屏風の前でしばし茫然。我に返ってから「すごいですね」と言ってくれた。何だかそのときの山本さんの顔がいつもと違ってちょっとおかしかった。言葉にはしなかったが、そういう反応もこれまた嬉しい。

翌日からまた室内工事が始まるので屏風は片付けておいた方がいいという豊田さんからの指示もあり、父が帰ってきてから屏風を家族4人で再梱包し、久々の『壁畫に集ふ』ともお別れする。

by m-louis : 2004.09.24 21:58
comment









cookie:






現在コメントはブログ管理者の承認後に反映される形を取っております。
▲PAGETOP