2008年06月15日 (日)
名刺入れとペンホルダー
2008年6月10日 19:34, 東京八重洲のカフェにて garaikaさんから直接手渡されたところ。
祖父の遺作展を控えた4月中旬、銀座にある中村活字という活版工房で活版印刷の名刺を作った。「丸井金猊プロフィール」のエントリーで祖父が教師をしていた県立神奈川工業高校の卒業生・よもうにみちけるさんから「タイポグラフィーの基本をいやというほど叩き込まれました」とコメントいただいているように、展覧会場で祖父の教え子と名刺交換することになったときに、あまり恥ずかしい名刺は出せないなと思ったのである。それですぐに思いついたのが、Kai-Wai 散策「中村活字で名刺を」のエントリー。
名刺のデザインは祖父がかつて使っていた縦型名刺を参照し、敢えて名前の上に余白を与え、大阪の住所、郵便番号、電話番号、谷中M類栖のURLのみを記載した至ってシンプルなものとした。メールアドレスも携帯番号(そもそも持ってない)も載ってない。
ただ、それでも注文してそれなりにコスト掛けて作った名刺を持つと、その名刺をそれまでのいい加減なホームプリンタ印刷名刺のように財布から出してというのも気が引ける(ま、それまでは名刺持ってること自体が恥ずかしいというモラトリアムな自意識があり、今持ち合わせがなくて・・で済ませてしまうことの方が多かったのだが)。
ところがそんな矢先、garaikaさんの家づくり行ったり来たりで「Eさんの名刺入れ」という記事がエントリーされたのである。以前からレザークラフトで作られたものを度々ブログで紹介されていた garaikaさんにはいつか何か注文してみたいと思っていたのだが、その名刺入れの写真を見た瞬間、そのときは来た!とばかりに早速相談のメールを送っていた。そして、それから約2ヶ月後の6月10日、できれば郵送よりも手渡しでということで、仕上がった作品を直接受け取ったときの写真が冒頭のものになる。
しかし、ご覧いただくとわかるように、その写真には名刺入れの他に手帳と何やら棒状のものが写っている。それらこそ garaikaさんに注文したならではのオーダーメイドの醍醐味のようなものだったのだが、その話は後回しにして、まずは名刺入れのことから触れていくことにしよう。
名刺入れについては「Eさんの名刺入れ」という明確なモデルがあったので、色の好みを言って、ポケットの数と何枚くらい入るようにするか、そして装飾をどうするかということを決めるくらいの話だった。当初は(^^;)
ところがメールのやりとりをしながら実際の仕上がりのイメージが自分の中でリアルに想像出来始めてくると、私の悪いクセとでも言うか、気まぐれな思いつきがつい口をついてアレコレ出て来てしまったのである。しかし、そこはさすがは garaikaさん!
その思い付きに付き合われながら、徐々に私が求めているものが何かを整理されていった。ただ、一応は家づくり経験1回の私も多少は施主馴れしてきてるのか、その自己解体→交通整理の過程は自分で自分を楽しみながら(敢えて無理を言ってみつつ、最後はシンプルにまとまるようにという意識を持って)、創作に立ち会えたように思う。
無論、家のように大きなものではないからというところもあるんだろうが、この互いに余裕をもった落ち着きの中で家づくりに臨めたなら、家づくりも「オトナの嗜み」の域で贅沢に(金銭的な意味でなく)味わい尽くすことができるだろう。と同時にふだんの自分が創作の側にまわっているときにもクライアントにそのような感覚を味わってもらえるように持って行きたいものである。
最終的にはヌメ革をそのまま使ったシンプルな名刺入れに。今後アメ色に変色していくのが楽しみ。
さて、仕上がった名刺入れは満足を超えて何度も唸らせられる仕上がりだった。最終的にM字で決着したステッチによる装飾は漠然と想像していたこじんまりとした意匠からは掛け離れた、見ての通りの超大胆なものとなっていた。ついM字開脚と書いてしまいたくなる面一杯のMである(笑) ただ、そのMがタダのMでないのが、名刺入れを開いたときにわかるようにしっかり折り返された革の縫い合わせとして最も適当な位置にあしらわれていることである。さらに嬉しいことにその開いた面にもMの刻印があり、そして名刺を取り出しやすいように逆三角形を入れたことで、その面全体もまたMに見えなくもない。まさにM尽くしの名刺('M'eishi)であり、「超Simple、だけど"M"」というのが garaikaさんのコンセプトだった。
名刺入れに名刺を挟んだところ。枚数が入るように膨らみを持たせられている。
そして、そんなシンプルかつ大胆な名刺入れが仕上がっていく過程で私が言い出した気まぐれ思い付き注文が、その名刺入れにふだん手帳に挟み込んでいるミニシャープペンを差し込めないかという話だったのだが、garaikaさんからは名刺入れにペンホルダーという組み合わせ上の違和感と、ホルダー部分を付けるとその分だけ名刺入れに厚みが増すことを指摘され、むしろペンホルダーの付いてない手帳の方にペンホルダーを付けたらどうかという提案がなされたのだった。
常用しているみずほ銀行の手帳と興銀のシャーペンに合わせて作ってもらったペンホルダー。
その結果として生まれたのが上記のような板状のものにペンホルダーを付け、それを手帳に挟んでゴムバンドで留めるというものである。板状なのでそれは栞としても使え、また裏面にはこれも私が思い付きで言い出したポケットを付けてもらって、そこに数枚カードを挟んでおくこともでき、名刺入れを忘れたときの予備名刺入れとしても活用できるだろう。装飾はこちらもM字をステッチで描き、それがそのまま中の塩ビ板を革でくるむ端を留める役割を果たしている。また、私の思い付きのポケットがここで思わぬ効果を果たし、本来だとどこかで革の継ぎ目が見えてしまうのだが、それがポケット部に来ることでほとんど見えなくて済んでしまった。
ポケットをあしらってもらった面。朝妻さんにプレゼントされた消しゴムスタンプの印がここにも(^^;)
garaikaさんにとってペンホルダーは初めて手掛けられたもので、ステッチを細いものにしておけばよかったと若干納得のいかないところもあるようなのだが、名刺入れと並べて置くと、兄弟というか、漫才コンビというか、ドンキホーテとサンチョパンサみたいな姿形が同じ太さのM字ステッチだからこそ浮かんできて、愛着を覚えるものである。また、ゴムバンドの劣化を視野に入れて、それを取り外し式にされてるあたりは、さすがは福田政権の200年住宅ビジョンを評価されている garaikaさんである(笑)
何となくボケとツッコミって感じの名刺入れとペンホルダー。ゴムバンドはツッコミ入れる手か?(^^;)
そして最後にオマケを一つ。これは garaikaさんが製作過程に入られてから思いつかれた別のペンホルダーで、ペンホルダーにプッチンクリップというクリップを付けて、それを手帳の1ページに装着するというものである。ゴムバンドの付け外しをしなくてよいという点ではこちらの方が簡便なので、しばらくは両方を実用で使ってみて、使いやすい方をメインの手帳で使っていきたい。
このようにクリップでペンホルダーを装着する。
以上、どれも手に取ると自然と笑みがこぼれてくるのだが、ひとつ悔しいのは私が平常ひきこもりで人と会う機会があまりないということである。以前ブログ始めてブログのネタのために行動するなんて本末転倒な話を耳にしたが、私の場合、名刺入れを人に見せびらかせるために、人と会うなんていう本末転倒を演じるのだろうか(汗)
□◇
このエントリーは garaikaさんから名刺入れ等々を受け取ったときに話を示し合わせて同日エントリーにしようということになっていた。garaikaさんはひょっとして待たれていたのかもしれないが、時間的にもちょうど私がエントリーしたのとほぼ同じタイミングでエントリーされたようだ。
⇒ m-loiusさんの名刺入れ──「超S、だけどM」なモノ
そのエントリーの文末でも書かれているように、何を書くかは相談せず、ただ、エントリー日だけを示し合わせたものだったが、そのエントリーを読んでるとまた自然と笑みがこぼれてくる。何ともクライアントとして良い時間を過ごさせてもらった。というかその良い時間は名刺入れの経年変化と共に今後も続く。
excerpt: しばらく前にm-loiusさんから名刺入れの作成依頼が来た。ちょうど名刺を新調したタイミングで、「Eさんの名刺入れ」を見て、名刺入れが欲しくな...
weblog: 家づくり、行ったり来たり
どうもです。
楽しいモノづくりができました。
それで喜んでもらって何よりです。
なお、これで商売していただければ繁盛間違いなしです。
そういう念を込めました(笑)。
話のきっかけにもなると思います。
ガンガン外に出てください。
日用品はフィールドテストが重要です。
使ってみて気がついたことがあったら教えてくださいね。
garaikaさん、改めましてありがとうございます。商売繁盛の念込めまで!
ちなみに今のところ、妻と友人一人に配った(見せびらかした)だけなのですが、
早く実践の場で使いたいもんです。
フィールドテストで気づいた点というのも「建築家と施主」と同じですね(笑)
というか、それはシェアウェアとも同様の話で、気づいたことは良いことも悪いことも報告させていただくつもりです。
朝妻さん、ども!
ココにもアレが!ってことでTB送ってしまいました(^^;)
こういうさり気ないところの洒落気、たまらんです。