2006年03月06日 (月)

蟻鱒鳶ル初見学

Arimaston Building

岡土建と無印良品の家」「「家」の選択肢」などでも取り上げてきた岡啓輔氏の自邸セルフビルド「蟻鱒鳶ル」の現場をようやく見に行った。ミクシィ非公開コミュニティ「蟻鱒鳶ル現場報告」でおおよその近況はわかっていたが、やはり土が見えているうちに一度は敷地を確認しておきたいと思い、岡さんとの面識もある野次馬CT氏を誘って
三田まで出掛けたのである。場所は普連土学園という女子校の真ん前。この情報だけあれば、誰でも場所の見当は付けられるだろう(※1)

Kuwait Embassyついでに書いておくと丹下健三氏が建てた在日クウェート大使館もそのすぐ先にある。岡さん曰く、彼の作品集にはクウェート大使館のことがあまり出てないというが、本人的にあまり満足の行く建物ではなかったのだろうか? ちなみに通りからは見えないが、普連土学園も奥の校舎は大江宏氏設計とのことで、この通りはちょっとした巨匠建築家通りと言えるのかもしれない。蟻鱒鳶ルもその一つになってほしいものだ。

工事は根切り工事というか、地下を堀る工事の途中だった。一度重機が入った後だったので手前側の土はだいぶ掘り出され、四方2、3mくらいに人の背丈ほどの穴が出来ていた。掘り出された土は土嚢に入れて、高く積み上げられていたが、もう何袋になると言っていたか、、ちょっと忘れてしまったけど(袋自体はホームセンターで500袋買ったと言っていた)、とにかく敷地の1/3を埋め尽くす勢いで山積みされていた。当然セルフビルドなので、この掘り出した土も自分たちで運び出す手配をしなければならないし(※2)、先の重機だってまず借りられるところまで持ってくるのに相当な関門をくぐり抜けて来ているのである。

Arimaston Buildingこの辺で地方でセルフビルドやることと都心の真ん中でやることでは全く苦労の質が違うことがわかるだろう。地方であれば一声掛ければ動いてくれそうな話も、都心では業者絡みでないとまず動いてくれない。とにかく何度もお願いに通ったり、知り合いの知り合いの伝手を探ったりと地道な交渉を繰り返すことによって、ギリギリ道が開けて来ているのだ。おそらくはこの交渉作業の方が実際の工事に掛かってる時間よりも遙かに長いんじゃないかと思う。そして、その度に岡さんは建築業界の仕来り等から生まれる膿や黴、闇のようなものと向き合うことになるのである。

残念ながらこの日の我々はそのまま作業服になれるような恰好をしてなかったので、土掘りの手伝いは遠慮されてしまったが(手伝ってるように見せかけたヤラセ写真は撮ったけど)、それでも身長分掘られた穴の中には降りさせてもらえた。

世の中そうそう道路の際の下から道行く人を見上げるなんてこと滅多にあるもんじゃないので何とも新鮮な光景だった。通り掛かる人も皆、びっくりしたように下を見下ろしていたが(特にその日は岡さんの友人が他にも2人来ていて、計5人の男がその中で立ち話をしている状態だった)、そこを通り慣れている人のうちの何人かは「ごくろうさん」と声を掛けて行ったりもする。

岡さんの話では子供連れの父子がよく見に来るのだそうな。作業中じゃなくても5分くらいは見ているし、作業が盛んなときには相当長時間見守っていて、しかもそのお父さんは子供が帰ろうと言い出すまで自分からその場を離れようとすることは決してないんだとか、、何とも見上げたお父さんである。手伝いをお願いしたら二つ返事で協力してくれるんじゃないだろうか。CT氏が「本当は岡さん、これから先、仮設工事で敷地を覆うシートが必要になっても、そのシートは白ではなく透明の方がいいんじゃないか?」と言っていたが、まさにその通り、岡さんの蟻鱒鳶ルは工事過程そのものまでがオープンハウスと言いたくなるものなのであった。

次回はちゃんと作業服で行かなならん。

□◇
※1)誰でも場所の見当は付けられる
どこでもそうだが、敷地の前には建築基準法による確認済のプレートが立っていて、さらにその上には岡さんからのメッセージまでが書き記してある。以下にそのメッセージを転載しておくがこういう施主のメッセージが工事中の段階から出てるのってちょっといいなと思った。まあ、書体に味がないと格好悪いかもしれんけど。。

ここに小さな住宅を作ります。妻と私が住むモノで、設計、現場管理・施工を、私・岡啓輔が責任をもって行います。工事中は何かとご迷惑をおかけする事と思いますが、何卒よろしくお願いいたします。
2005年12月16日 一級建築士・岡啓輔

それと一つ前のリンク先写真を見て気づいた人もいるかもしれないけど、確認済証交付者が実は少し前に世間を湧かせたイーホームズの藤田東吾氏だったりする(^^;)
このイーホームズってネット情報に関しては結構敏感なところ持ってるみたいで、あの「きっこのブログ」で取り上げられたことも「今回の事件に係り、弊社でも関知し得ない情報提供を行う「きっこの日記」、「きっこのブログ」というネット情報サイトがあります。このサイトには、時に弊社に対しても辛辣な表現がありますし、この事件と関係のない内容も記載されていますが、フランクな文言も御座いますが、しかし、この事件の真実を語る上で重要な情報が存在すると判断できます。」なんて書きながらトピックスに情報提示しているところがちょっと可笑しい。最近では「家作り日記」の活用を勧めるオンラインサービスも開始したようだ。

※2)掘り出した土も自分たちで運び出す手配
根切り等で掘り出した土に関しては、うちでもリサイクルできないかと頭の中では思っていたのだが、結局は処分という形で話は進んでしまった。そして当然処分には処分料が取られる。おそらく業者に頼めばほぼ99%そういう処分という扱いにさせられていると思うのだが、裏の話を聞けば、実は「処分」という形を取りながらもしっかりリサイクルしているのが建築業界の慣例なのだそうだ。環境問題としてのみ考えるならそれはそれで悪いことではないが、現状として施主がその分の工費を多く見積もらされているという事実があることは疑いない。蟻鱒鳶ルを見守ることで今後もこの業界の拝金搾取体質を嫌と言うほど垣間見せられることになるのであろう。

by m-louis : 2006.03.06 16:00
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2006年11月08日 17:38
蟻鱒鳶ル〜クウェート大使館
excerpt: 三田界隈その2 蟻鱒鳶ル 昨日の記事のコメントでm-louisさんに指摘された通り、三田を訪れた目的はこの蟻鱒鳶ルです。m-louisさんに場所を聞いておこうか
weblog: ちはろぐ
2008年01月31日 19:25
アクセス検索ワード2007.05
excerpt: 2007.04.13 13:48, 東京都港区三田(蟻鱒鳶ル), Ricoh GR Digital 「結婚できない男」が再浮上。DVD でも出たのかな?...
weblog: 谷中M類栖
comment

ところで、私は普連土の卒業生だったって知ってましたっけ?
懐かしい三田です。校舎は大好きでした。今はよく知らないですけどね。

by mitsubako : 2006.03.16 13:22

>mitsubakoさん
ひょっとした聞いたことあったかもしれませんが、
そもそもどこの女子校がどこにあってということにはまるで興味がないもので、事実上知らなかったに等しいですね。
でも、つまり、ということは高校生の頃からクウェート人は割と身近な存在だったということですね(^^;)

by m-louis : 2006.03.17 03:00

TBありがとうございます。
実際訪れて、気合いの入り様が伝わってきました。
いつ頃入居可能になるのでしょうかねぇ。

この頁にTBを試みたのだけど受付けてくれなかったみたいです。

by ちはる : 2006.11.09 05:18

↑あっ、TBできてる!

by ちはる : 2006.11.09 07:13

>ちはるさん
なんか、ひょっとしてガウディのサクラダファミリア状態になっていくのでは?という気もしてるんですが(決してネガティヴな意味ではなく)、まあ、そのうち現実的に住みながら造ってるという状態があってもおかしくないような気がします(ただ、建築法規がそれを許さないのか?)。

TBの方はどうも最近MTのサーバへの負荷が増してるようで、反応悪いことが多いようです。ご迷惑お掛けします。コメント書き込まれるのもえらいのろいし。。

by m-louis : 2006.11.10 05:42









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