2006年03月06日 (月)

虫の詩人の館*ファーブル昆虫館

横浜への出張ついでに谷中に一泊することを実家に伝えたら、それから程なくして母のところから『うえの』という小冊子(上野のれん会発行)の2006年3月号が届いた。
冊子にはフランス文学者・奥本大三郎氏の書かれた「ファーブル昆虫館」のページに付箋が貼られ、彼が千駄木の元実家のあったところに新しく昆虫館を建て、3月6日(月) にオープンさせるという記事が掲載されていた。

設計カルテの自己プロフィールでは全く触れなかったが、何あろう、私の子供の頃の夢は昆虫博士になることであった。あるタイプの極めて一般的な夢の一つとも言えそうだが、その仕事を続けてもそう簡単には食ってはいけないということを知った頃にはその夢を口にすることもなくなり、いつしか昆虫少年時代を終えていた。

しかし、親というのは(それもたぶん異性の親)そういう子供時代に子供が語る夢というものを決して忘れてはいないようで、それが今回の付箋となって現れたわけである。というわけで、そのオープンの日に偶然にも谷中に居合わすことのできた私は、Fleur という洋食屋で両親+野次馬CT氏とランチしたあと、昆虫にはまるで興味のない父を残して3人で千駄木小学校のすぐ側にある「虫の詩人の館*ファーブル昆虫館」へと向かったのである。

現代建築にはほとんど興味のない私としては(なんてココで言っていいのか?>汗)、建物そのものについてはノーコメントとしておくが、奥本氏の言葉をそのまま借りれば「地下一階、地上四階の、シルヴァー・グレーにレモン・イエローという、ちょっと目立つ建築物である」という感じで、まあ、まち歩きしててこの前を通っても写真を撮るようなことはなかっただろう(尊敬する奥本先生のお家なので、こんなこと本当は書きたくないのであるが>汗>汗)。

ともあれ、中の展示物に関しては私の心を踊らさずにはいられないものが待ち構えていた。基本的に元個人宅規模の昆虫館なので、例えばデパート等でやられる昆虫展のような派手さはないが、私個人としては国内の昆虫標本を中心とした展示の方が、子供時分の記憶が存分に蘇ってむしろ楽しい。それから甲虫標本の日本・フランス比較展示などもあって、フランスの甲虫が日本の甲虫以上に小さく地味であったことにはだいぶ驚かさせられた。ファーブルは幼少時代にこんな地味な昆虫たち相手に昆虫オタクになれたのかと妙な感心をしてしまった。というか、現在のフランスの子供たちの間にどのくらい昆虫少年っているんだろうか? 私は昆虫に関してだけは日本に生まれて良かったと思いっきりナショナリストになってしまうのである(笑)

ちなみに地下1階には生きたヘラクレスオオツノカブトムシやコーカサスオオカブト、ニジイロクワガタといった海外の甲虫類、またタイコウチやコオイムシ、ミズカマキリといった国内の水中昆虫が展示されている。最近は海外産の昆虫も手軽にペットショップで買える時代になってしまったので、決して珍しいものでもないが、それでもペット屋で見掛けるものよりも形も大きさも立派だったので見応え充分だった。でも、やっぱり昆虫ナショナリストな私は国産水中昆虫の方に心奪われてしまったな〜。記憶力が絶望的に悪いはずの自分なのに、すべての名前がすらすら出てくるし。。

なお、1階の展示コーナーは季節によって展示替えしていくらしい。
通常は金・土・日のみの13〜17時と開館時間は短いが、拝観料が無料なので今後も散歩がてら何度も足を運んでしまいそうである。

【写真】2006.03.06 14:32 千駄木5丁目・千駄木小学校より北に程なくの位置
    道路を渡ろうとしているのは野次馬CT氏と母。写真に気合いがない。

by m-louis : 2006.03.06 14:32
comment

m-louisさんが昆虫少年だったなんてめっちゃ意外です(^^ゞ私は「虫マップ」の作者のくせに虫が苦手だったりしますが(笑)。家の中に蛾でも入ってこようものなら悲鳴あげて逃げ回ってます。
ちなみに手塚治虫が採集した昆虫標本とか興味あったりします?

by のりみ : 2006.03.10 21:21

>のりみさん
やはり意外ですか、、自分的には割と真直線な道程なんですけどね(^^;)
でも、私の昆虫少年時代というのは文学や文化とは何の接点も持っていない年頃のものでしたので(その点で私は明らかに早熟とは無縁の人間です)、手塚先生とは見事にすれ違ってしまいました。ある意味、マンガとかを読むようになって昆虫を卒業してしまったとも言えるかもしれない。でも、今でも妻の実家に帰省すれば昆虫捕まえに行ってるくらいなので標本があれば当然心は躍ります。
しかし、虫マップ作者が虫から逃げ回ってるとは笑えた(^^ゞ

by m-louis : 2006.03.10 23:05

おお、ここはみつばち好きのわたしとしては行きたいところなのですよ。外観はともあれ、是非一度…。

by mitsubako : 2006.03.13 12:21

>mitsubakoさん
そういえば今回の展示で蜂はなかったかも。。
でも、四季により展示替えと言ってるので、シーズンによっては出てくるかもしれません。
ただ、ふと思うに昆虫少年だった頃、蜂には見向きもしなかったというか、実質的に捕まえようとすると刺されるので、単に恐怖の対象だったような気がします。
クワガタ捕まえに行こうとすると大抵くぬぎの樹液のところにいるんですよ、、スズメバチが。。あれほど憎らしいものもありませんでした(^^;)

ファーブルはどのくらい蜂について記述してるんだろうか???

by m-louis : 2006.03.13 15:12

> ファーブルはどのくらい蜂について記述してるんだろうか???

と書いてふとコメントの下を見ると Amazon Search の最初の本が蜂についての記述のある本のようですね。ファーブルの本は少年時代に読んだっきりなもんで、たぶん関心あるとこしか読んでなかったんだろうな〜(^^;)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4097272721/

by m-louis : 2006.03.13 15:16

ファーブルは、蜂だけに集中して書いてはいないですが、でも美しい文章でいろいろな章に出て来ます。なので全巻文庫本で持っていますが、未だすべてを読み通せてないなぁ。。。
ところで、下の熊田さんという昆虫の絵を描く方は神奈川の方。絵本で賞をとられた時に感動してお会いしたことがあるのです。もしかすると高校生とかそんな頃。その頃から意識はしていないにせよ私も結構な昆虫好きだったのかもしれないなと思います。
もうすぐ、もっと蜂が飛ぶ季節…わくわくして来ました!

by mitsubako : 2006.03.14 10:07

さすがにプルーストの『失われた時を求めて』ほどのボリュームはないですが、全10巻各巻上・下、全20冊ですもんね。
http://www.shueisha.co.jp/fabre/message/

前コメントでも書いたように当時は興味のあるところしか読んでないはずなので、この本は老後の楽しみの一つとなっていきそうな気がします。今はまだ自分の時期じゃないような気がする。というか、本にはある程度読むべき時期というのがある気がします。その点でときどき早熟な人は案外損してることもあるのかな〜なんて思ったりすることがあります。10代で読む漱石と30前後で読む漱石がおそらくはまったく別解釈で見えてくるように。。

・・と話が文学に流れましたが、熊田千佳慕さんという方は検索して知りましたけど、この方の書く昆虫絵は子供の頃、確実に見てるような気がします。ちなみに私の春の実感は筋黒蝶には悪いけど、やっぱり紋白蝶ですね。

by m-louis : 2006.03.15 04:39









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