2006年04月27日 (木)

耐震強度偽装問題への提言5

さて、このエントリーでようやく本題ともいうべき耐震強度偽装問題への提言(素人の暴論)に入りたいと思うが、その前に時事ネタを一つ。周知の通り、4月26日、とうとう耐震強度偽装事件の一斉逮捕が行われた。この問題を国会で最も鋭く追究して来られた民主党議員の馬淵澄夫氏もご自身のブログで「160日目の逮捕」というタイトルでエントリーされているが決して感慨に耽ってなどいない。その文末で〈160日目の逮捕は、新たな展開のゴングでもある。〉と結ばれているように、彼の視線は〈平成10年の建築基準法改正の議論の時に、制度の抜本的改正を行わねばならない立場にいる建設省ならびに与党の議員たちの不作為の責〉と〈建築基準法改正審議〉に向いている。

しかし、私個人としては行政側の問題は馬淵氏らにお任せするとして、むしろ今回逮捕された面々+αに、あくまで「建築」という次元に踏み留まった上での追究をしていきたいと考えている。それは私が彼らに「建築」という「業」で生きてきたからには「建築」という「業」においての責任をしっかり果たしてもらいたいと考えているからだ。
(まあ、その辺が素人の無邪気な暴論・空論と言えるところでもあるんだけど)

そのために彼らに実施してもらいたいと考えたのが「提言1」で早々に結論づけた〈退去勧告の出された一連のマンションを耐震構造から免震構造に置き換えよ!〉である。

もちろん彼らは建築士資格を剥奪されたり、破産申請していたりと既にそれを実現する実行力はもう持ち合わせてないだろう。しかし、それを実現させるために奔走してもらうことは刑期を終えれば可能だし、たとえ拘束中の身でも彼らの発言の伝搬力は他の専門家の声を遙かに凌ぐ力を持っている。良くも悪くも彼らはメディアの寵児であるのだ。そのことにもっと意識的になってほしい(姉歯氏はなってるのかもしれないが)。

ところで耐震強度偽装で退去勧告の出されたマンションのうち、幾つかのマンション住民(例: GS東向島GS藤沢)は解体→建て替えを決議したそうだが、国の支援をアテにした解決方法が全国規模でどこまで可能なのだろうか? 私はその決議が見切り発進のものでないことを祈るが、しかし、建て替えるだけの予算と覚悟があるならば、ここは被害者住民たちが一丸となって全被害マンション免震化を再考してみるべきと思うのである。そこで重要なのは個別にこの問題を協議するのではなく、被害マンション住人同士がネットワークを組んで、スクラム状態でこの問題に立ち向かうことだ。そして「免震建築は高くつく」という常識がねじれた常識であることに彼らが気づいたとき、国民の注目を集める彼らの発言はそのねじれをまっすぐにさせる可能性を持つはずだ。言うなれば被害マンションが免震化実践のキャンペーンモデルになるというわけだ。

そしてここで使えるのが今回逮捕された面々+αである。
これまでのエントリーでも再三繰り返してきたように、免震化を訴えれば当然既得権益耐震軍団の抵抗が始まるだろう。そのとき彼らに矢面に立ってもらって、あくまで「建築」という「業」のプロフェッショナルとして、被害住民の訴えをフォローする立場に回ってもらいたい。なぜなら彼らはある意味この業界ではもう失うもののない怖いモノなし状態であるはずだからだ。そして彼らの行動なり言動は好都合にもマスコミが延々追いかけ回してくれている。被害住民からすれば、彼らの協力など以ての外の話なのかもしれない。しかし、彼らはまだ取り返しのつかないことをしてしまった後の人間ではない(つまりまだこの問題で死者が出るようなことにはなっていない)のである。
それに彼らがこれから詐欺容疑等で実刑判決を下されたとしても、被害住民たちの腹の虫は収まるだろうか? おそらく彼らが真に責任を取り得る場があるとするならば、それは彼らが「業」としてきた「建築」という現場において他ないように思うのだ。

マンション住人は「建築家と施主」の施主の立場にあるものではないが、しかし、そのマンションを選んだという時点でデベロッパーの向こう側にある関係性(施工者・設計者・確認業者等からなる)とも共生関係にあったことを今回の事件は教えてくれたような気がする。マンションとはいえ、そこは人が生活する場であり、どんなにシステム化されていようとも、人の手によって作り出されたものなのだ。であるならば、こうした事件に際して、ただ被害者面で苦情だけを繰り返していても、それは自分の住処を消費しているにすぎない淋しいものとするだけである。それよりはデベロッパーと同時にその向こう側にあったものまでを見据え、解決への道を彼らを徒に排除するというのではなく、探ってみてもらいたい。彼らが道を踏み過ったのは事実だろうが、彼らも元はといえば「建築」に何らかの思いを来してこの業界に入ってきた人たちなのだ。もちろん未だに責任回避することしか頭にない者は話にならないが、真正面からこの問題に立ち向かおうとする者がいるならば、それを受け入れ、良い意味で使ってやってほしい。

私は現時点でも被害者住民と作り手側の共生(コラボ)が、そしてメディアや一般市民を巻き込むことが、この問題(事件ではない)の解決の鍵となると信じている。というか、そのくらいの挙党一致体制を敷かないと、結局は既得権益層の良いようにあしらわれるだけで終わってしまいそうなことをただただ危惧するばかりなのである。

by m-louis : 2006.04.27 23:01
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2006年05月01日 05:10
耐震強度偽装問題への提言
excerpt: 耐震強度偽装問題を解決するための具体策として、被害マンション全戸免震化の再考を提言する。その根拠は本件の免震化を厳しいとする専門家の声にこそ、建築業界の歪...
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