2006年10月03日 (火)

丸井金猊リソース ver1.0

谷中M類栖の1階展示スペース名を「谷中M類栖/1f という名前」にしたわけだが、
谷中芸工展に参加するプロジェクトの企画名は「丸井金猊リソース ver1.0」としている。これについても幾らかは説明を加えておいた方がよいだろう。

リソースとは「resource=資源」の意味で、現在にあっては IT 関連用語としての認知の方が圧倒的に強まってしまった感がある。実際、私が Web制作関連書籍で唯一影響を受けたと言ってもよい『スタイルシート Webデザイン』の著者すみけんたろう氏のサイト名も「Ks Resource!」であり、そのサイト内では「ホームページ」という和製用語の使用を批判し、その代案として「リソース」という言葉を提唱している。

まあ、その場合の「リソース」という言葉はあまり広まらなかったようだが、私は今回祖父の創作物をなるべく「作品」とは呼ばず、「リソース」として取り扱いたいという考えから「丸井金猊リソース ver1.0」というプロジェクト名を名付けることにした。

1997年に私は祖父の遺作展を初めて開催するに先立ち、「≪所有≫の所在」展という奇妙なタイトルの展示を行った。この展示では、祖父の屏風作品「壁畫に集ふ」とその下絵、また私の平面作品「おらないがみ」とそのプログラムを仕込んだPCという具合に、二つの完成作品とその創作過程を並置させ、作者と作品の間に生じ得る(あるいは幻想として生じているかに見える)所有関係を実験的に問おうとしていた。

しかし、それは事実上、そのあとに行う祖父の遺作展のための布石というか、祖父に対する言い訳のようなものだったのである。というのも、祖父が何も言わずに遺していった創作物の中には描き掛けのものもあれば、落款のないもの、また無造作に絹本のまま丸まって表装されてないものも多数存在していた。その中から私は祖父がどれなら自分の作品として認められて、どれなら認められないかという判断を厳密に行うことはできないと思ったし、そう思う以前に自分の感性に中途半端に頼って、曖昧な作品選別をするようなことだけはしたくないと思ったのである

そこで、半分は本気、半分は言い訳として行ったのが、祖父の手によるものと思われる遺品を出来得る限りナンバリング→データ化して、「作品」としてよりも、時代考証のための「資料・資源(リソース)」として提示するということだった。
そして、その考えは今もほとんど変わっていない。どころかインターネット時代の到来と共に、もはや祖父への言い訳として取り繕う必要性すら感じなくなってきている。

てなわけで、本展からはもう単刀直入に「丸井金猊リソース」と称してそれをシリーズ化し、今後は完全に自由なリソースの組み合わせとして展示機会を継続的に作っていきたいと考えている。ちなみにバージョンの小数点表示は、臨時の展示や企画延長なんてことを想定して融通を効かせやすいよう、設定したものである。

【冒頭画】「≪所有≫の所在」展で展示した丸井金猊 作『壁畫に集ふ』下絵・部分
     ※画像の上にマウスのカーソルを置くと、完成作の同部分が表示されます。

by m-louis : 2006.10.03 00:23
comment

1fって1階だったんですね。1/fと誤解してました。ごめんなさい。
一時期はやりましたよね。1/fゆらぎとか、ファジーとかいって、、、。ま、いいんだけど。

by あさみ編集長 : 2006.10.03 14:08

>あさみ編集長さん
1/f のことはまったく想定外でした。
いや、思わずググってしまいましたが、森元レオの声は 1/f なんですね〜。
そして、さらには「1/f=ゆらぎ」を意識した「ギャラリーf分の1」というところがしっかりあるようです。
http://home.att.ne.jp/air/galleryf-1/

その点でうちは滅茶苦茶考え浅いです。ただ1階(笑)

by m-louis : 2006.10.03 20:55

カーソルの移動による変化が、なんだか迫力ありますね。これは現物に力があるからに違いありませんが、X線透視のようで…QTVR(最近、やや食傷気味) を見る以上にグッときます。

by masa : 2006.10.04 01:25

>masaさん
下絵と完成画の間には制作者の生きている時間というボリュームが加わりますからね〜。その点のズレというのはなかなか面白いのではないかと思います。ただ、昔は下絵と完成画を見較べるにあたって、首を動かさなければなかったのが、今は指先の動きだけで視線を変えずに比較できるのだから便利なモノです。
私にとって上の完成屏風は生まれたときから当たり前に立てかけてあり、半ば壁のようになっていたので、下絵を初めて見たときの方がよっぽどインパクトがありました。一番右側の女性の顔などはかなり変わったんだなぁ〜と。。

by m-louis : 2006.10.04 02:08

マウス、何度もあわせて遊んでしまいました。おもしろいです。
それにしても、この絵は…いえ、この絵に限らずですが、相当下絵(草稿)段階で練られているのがよくわかります。こういう製作途中段階(メイキング)って完成品だけを見るのと違って、作者の裏側が見られる気がしてとてもおもしろいな〜と思うんです。

by のりみ : 2006.10.04 02:22

>のりみさん
遊んでいただき、ありがとうございます。
ちなみにクリックすると屏風の全体像が出てくるようにもなってます。
制作途上画の展示といえば、2004年に国立西洋美術館で行われたマティス展の「座るバラ色の裸婦」がかなり強烈に印象に残ってます。

by m-louis : 2006.10.04 05:50









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