2004年11月17日 (水)

欄間を介して

石 求ム!(※) でコメントされた garaikaさんのブログ「家づくり、行ったり来たり」が面白い!
11/16(火) エントリーの「欄間を見直す──光、風、温度の共有」では当初想定外だった欄間が建築家からの提言(提図と言うべきか?)により再考され、そこから「プロの設計技術を感じる」瞬間が描かれるに至る。いや〜、この「プロの設計技術を感じる」瞬間というのが施主にとっては極上の愉悦とでもいうべきときである。

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思えばうちでも欄間を介して建築家の「プロの設計技術を感じる」瞬間は訪れた。だが、それにはちょっとした紆余曲折も伴っている。実は現時点でこのブログは2004年6月のエントリーがごっそり抜け落ちているのだが、その理由は7/1(木) の「1Fタイル工事開始(※)」で書いていたこと以外にもあったのだ。

母撮影天井この6月は我が家の施工上、最後の追い込みで各種職人さんたちが入れ替わり立ち替わる最も忙しい時を迎えていた。私は私で月末に仕事の〆切を抱え、ブログも家のことも本腰入れられぬ状態にあったのだが、そんな中、週1、2回くらいのペースで工事見学に行っていた母からダイニングの天井に考えもしなかった板材(板目の杉縁甲板)が張られているという連絡が入る。それは図面通りの仕様なのだが、実はダイニングの天井板については同一製品のサンプル材を取り寄せての説明といったことがなく(初音すまい研究所のテーブルが杉板だったので、それを見てこんな感じという説明は受けていた)、あまり深く議論されてなかったということはある。しかし、母の驚愕(幻滅方向の)ぶりは相当なもので、まずはデジカメで撮ったという画像を送ってもらった。で、それを見ると私自身も確かに好ましい感じがあまりしない。母はそもそも節目のある材そのものを好まないところがあるが、私は別に節に対する拒否反応はない。いや、むしろ好意的といってもいいくらいである。にもかかわらず、私にとってその画像を見た印象があまりよくなかったのは材の色味それ自体とそのばらつき加減に帰するところが多かったように思う。

いずれにしてもこの時点で私はデジカメ画像しか見ていない状態だったが、父や妹も「このあとにまだ何かするんでしょ?」と言ってしまうような次第だったので、私の方から豊田さんにどうにかならないものか相談することになった。ところがそうした我々の心象を率直に伝えると豊田さんの方がえらくショックを受けられてしまって(豊田さんにとってその材は想定内のものとして現場確認済みだったこともあり)、その後、母と現場打合せの場など持ってもらったのだが、非常に厳しい顔をしてられたという。そのあたりの経緯はまた別エントリーに譲りたいと思うが、いずれにせよ、このとき我々はそれまでずーっと相性よく通してきた豊田さんと初めて意向の違いにぶつかってしまったのだ。それは私がこのブログでニューエントリーできない遠因ともなっていた。

欄間・丸太梁・天井板 ちなみにこの問題は、ひとまず現状のままとして我々が生活していく上でどうしても気になるというのであれば材を変えるなりクロスを張るなりということを考えましょうということで落ち着いたのだが、その後の工事で三鷹金猊居から持ち込まれた欄間がダイニング〜和室間に収まったことで我々の心象は一変するのである。

欄間(ダイニングから)三鷹金猊居の欄間は縦桟が細かくあしらわれた繊細な意匠のものだが、60年以上の時を経ており、如何せん古い。その古さが新しいものと同居したとき、この場合にあっては意匠上の特質(繊細さ)は表には現れず、むしろ古さ=濃さ(経年変化による材質の色変化)ばかりが粗々しく目立つ形になってしまった。ところがその我々にとって予期しなかった粗さがもう一つの粗さの雄=縁側に用いられた丸太梁(こちらは粗さが想定されてる)と共に先のダイニング天井杉縁甲板と絶妙のトライアングルを形作ってしまうのである。

それを現場で見たとき、私は思わず「やられた」と感じずにはいられなかった。それこそがまさしく建築家の「プロの設計技術を感じる」瞬間にほかならない。何と言うでもなく、ニヤッとなってしまうのである。ここに辿りつくまで随分遠回りしたが。。

このエントリーは「欄間」自体を問う話ではないが、「欄間」を介して得られた一つの事例として、まさしく欄間を介するように「欄間を見直す──光、風、温度の共有」にトラックバックしておきたい。
ちなみに三鷹金猊居の欄間の濃さは当然ホコリの堆積分も加味されてます(笑)

by m-louis : 2004.11.17 17:07
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2004年11月22日 21:10
渡り顎(わたりあご)
excerpt: ウチの古屋は純和風建築だが、新築部分は純和風ではない。箱が組み合わさったような形状で、竣工したら遠くから見たら木造建築だということも分からないかもしれない。 さらに、平坦な壁だったら、近くで見ても木造かRC造か、わかりにくかっただろう。 しかし、近くに立...
weblog: 家づくり、行ったり来たり
comment

「欄間」をめぐる紆余曲折を興味深く読ませていただきました。一度うなだれさせられてからの見事な変化だけに、そのうれしさ・楽しさは格別だったことでしょう。

写真で見てもコントラストが面白いですね。60年以上を経過したパーツの持つ風格は単独で存在させてはアンバランスに浮き上がってしまいそうですが、複数を配置することでバランスを保ち、杉縁甲板がそれをつないで落ち着きをもたらしているように思います。

 それにしても、

 クローズアップした欄間に見る、職人の繊細な仕事はちょっとため息が出るくらい雰囲気出していますね。こういう欄間が捨てられないで再利用されたということは、なんだかうれしくなってしまいます。

トラックバックありがとうございます。

こんな、いい話とつながったことは光栄の至りです。

by garaika : 2004.11.17 21:00









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