2005年02月28日 (月)
最近何かとコメントやトラックバックでお世話になってる業界唯一完全独立系建築プロデューサーの朝妻義征氏から氏のプロデューサー暦10年の集大成!! という著書『家づくりは、はじめてですか?』を送っていただいた。ここ最近ずっと仕事で忙しくしてるもので、リクエストしておきながらすぐ読み掛かれるような状況ではなかったはずなのだが、食事中に数ページを捲ってしまったのがまずかった。朝妻さんを思わせるジンという怪しい男に誘われて、ついそのまま最後まで驀進。ま、精神衛生的にもこうしたものが手許に読まれぬままあっては仕事にも身が入らなかったろうからやむを得ない(スミマセン、クライアント様)のだが、いずれにせよ家づくりした者が一旦読み始めたら絶対最後まで読まずにはいられないだろう本だった。
「家づくりの迷路に迷い込んだ30代の主婦の前に『家づくり成功ツアーのガイド』と名乗る変な妖精が突然現れた。彼女は無事に迷路の出口を見つけることができるのか?」と帯にもあるように話はファンタジックな物語仕立てで進むのだが、何だか最後までずっと「ふむふむ」「ふむふむ」と頷きながら読んでいたような気がする。ネタバレになるのであまりディテールには踏み込まないでおくが、ここには家作りを通して学べた思考展開がファンタジーとしてはかなり胡散臭い(だからこそリアルで面白いのだが)やりとりの中でじっくりと常に後ろを振り返りながら再現されていく。
で、ここで重要なのがこの「じっくりと常に後ろを振り返りながら」という点だろう。家づくりにおいては自分を含む家族の生活・趣味・嗜好から家づくりという行為そのものに対してまで常にそれをゼロから洗い直しとことん見つめ直すことが求められるが、それらは「じっくりと常に後ろを振り返りながら」やっていく以外に方法はない。というか、それを端折ろうとするのなら何もわざわざ建築家と家づくりする必要もないのだ。ある種、新ジャンルとも言えそうな胡散臭いオヤジファンタジーという形式が採用されたのも、この「じっくりと常に後ろを振り返りながら」を何とか表現のレベルに落としていくための手法だったのではないだろうか。
と以上は家づくりを終えた施主視線による雑感。
が、他方ではこの本を読みながら、もし家づくりを始める前の施主が読んだらどんな印象を持つのだろうか?ということも考えていた。それについては家づくり前に戻れぬ私にはもはや想像でしかないのだが、ひょっとすると「じっくりと常に後ろを振り返りながら」が仇となる可能性もなくはないかも?とも思えてしまった。家づくりをこれから始めようとしている多くの施主は手っ取り早く家づくり成功の秘訣だけ教えてくれる本を求めているような気がするからだ。
とすると、これは家づくり完了組の施主が「とにかく騙されたと思って読んでみぃ!」と各所で積極的に推薦していくべきではなかろうか?(朝妻さん、失礼な物言いでスミマセン) ノアノアさんのエントリー「施主適齢期」コメント欄で書き込んだ「施主連合で施主必読書50」ってのも結構マジで考えたい企画なのである。
それと最後に余計なツッコミを一つ。
本を書棚に収めようとしたときに気づいたんですが、朝妻さん、なぜに背表紙を白紙(+赤)にされちゃったのでしょう? 規格外れの本って何だかんだ最初は目立っても後々始末に負えなくなってくるものですが、何も地味な方向性で規格外れなことされなくても....(^^;)
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朝妻本に捧げるレビューが施主ブログで続々エントリーされてるので以下リンク一覧。
著者本人による自著本についてのエントリー一覧。
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