もし流通性といったことを考えるならば素直に「谷中M類栖ギャラリー」などとしておいた方が賢明だったかもしれない。しかし、どうも「ギャラリー」という言葉を用いることに、うちの1階スペースにおいては抵抗を感じてしまうのである。
Wikipedia「ギャラリー」にも出ているが、ギャラリー=ガレリアは本来イタリア語で「回廊」を意味するものである。ところがうちの展示スペースにはあまり回廊っぽさがない。自立する巨大屏風の常設を想定して設計されたため、展示壁面の面積も少なく、事実上、一壁面の一室空間といっても過言ではない設えとなっている。つまり廊下的要素のあるところに展示物がまるでないのだ。それをギャラリーと呼ぶのってどうだろうか? 別に「言葉」なのだからどこまでも語源に忠実である必要もないのだが、どうも出来上がったうちのあの空間を見て、ギャラリーと言うのには違和感を覚えたのだ。
またギャラリーの対訳として日本では一般化している「画廊」という側面においても、当面の間はうちが画廊的機能・サービスを提供できるとは考えられない。これは私が東京に住むことになったとしても難しい仕事だと思うが、そんな運営者すら不在の現在にあって画廊なりギャラリーなりと銘打つのはちょっと烏滸がましい気もするのだ。
と同時にやはり何は言っても、我が家は住宅なのである。これも私が住んでいれば話はまた別だが、私的空間に公共性を持ち込む以上、セキュリティのことも相応に意識しておかなければならない。住所や電話番号の表記等、本当に迷いどころである。
そんなところから、今回、この展示スペースの名称を「谷中M類栖/1f」という、ある意味1階という場所をただそのまま指してるだけの名前にすることになった。まあ、これで定着してくれるなら、それはそれでいいだろうし、状況にそぐわないようなら変更することもあるかもしれない。その辺の気軽さは自宅ならではである。
オチになるかは微妙だが、ついでにもう一つだけ、「谷中M類栖ギャラリー」を避けた理由を書いておこう。それは「作品管理・展示空間考」のカテゴリに既に「gallery」というディレクトリを割り当ててしまっていたので、専用サイトを設けたときに URL が被るという問題があったのだ。その点で「1f」は語数も短く、URL 向きだった。
というか、この URL 問題が先にあって、そこから上述の理由が後付けられたのでは?という問いがあったとしても、決してそれは穿った見方だとは言えない(笑)
【写真】2005.03.09 18:35, 谷中M類栖1階, 正面の屏風は『観音前の婚礼圖(仮)』
(「谷中M類栖/1f──丸井金猊リソース ver1.0」で上記の作品は展示されません)
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