July 07, 2005

ガルバリガルバニ、トタン

TUTANAGA SHED先月あたりからすっかりハマッてしまった Photo Sharing Service の Flickr!(サーバ容量気にされてる方にも使えると思う)。
写真共有のネットワークなだけに国内に留まらず世界とアクセスしてた方が圧倒的に面白いので、なるべく頑張って英語でタイトル表記してるのだが、そこで結構困りものになってるのが建築用語君たちである。

例えば「トタン」。
一部の好事家の間でこよなく愛されるこの建材を和英辞書で引いてみると「galvanized iron」なんて出てくるのだが、これじゃー若手建築家などが好んで使いたがる「ガルバリウム」と同列になってしまい、味も素っ気もあったもんじゃない。まあ、ガルバ派の人たちからしたら、錆付きやすい亜鉛合金めっきだけのトタンとそれに長期耐久性を兼ね備えたアルミニウムを混入させたガルバを一緒にすんなよ!とむしろ反論喰らいそうでもあるが、いずれにせよ、一緒くたにされては困る用語たちなのである。

ところでその「ガルバリウム」であるが、この言葉、一つおかしくないだろうか?
rattlehead さんも「今日の低脳ホラー」というエントリーで取り上げられているが、そもそも先の「galvanized iron」から引くなら「galvan+ium」であって即ち「ガルバニウム」となるはずのもの。galvanized が「亜鉛メッキした」という意味を持ち、それにアルミニウムの混成語として文字通り2語を掛け合わせたとしても「ガルバニウム」の方が語としての適正を持っていると見るのが自然だろう。
ところが、そのガルバニウムを Google 検索すると検出数は約840件、それに対してガルバリウムは約18,100件と後者の圧勝なのだ。実際、rattlehead さんもスペルは「GALVALIUM」なのですと言われながら何となく首を傾げられている。

そこで今度は「galvanium」「galvalium」と英字検索して検出数比較をしてみた。すると267:182 で「ガルバニウム」が勝利を収めるのだが、先の検出数との比較からしたら、このくらいでは僅差と言う他なく、こんな少数対決ではこの用語がそもそも建築用に作られた造語であることしか意味しはしない。ちなみに我が家のバルコニー上外壁でもガルバ君は使われてはいるのだが(汗)

さて、ここでもう一度話を「トタン」に戻そう。
というのも実はこのトタンにはポルトガル語で「tutanaga」という、まさにトタンをイメージさせてくれる言葉があり、先の和英辞書にもそれは付記されていたのだ。どうやらトタンの語源がポルトガル語の「tutanaga」にあったということらしい。ただ、その言葉は現在のポルトガルではもう使われていないと言う。。
それでも私は Flickr! では「TUTANAGA」という英字をタイトルに採用することにした。やっぱりトタンの茶目っ気は「GALVANIZED IRON」では示せない。


by m-louis : July 7, 2005 05:36 AM
trackbacks
July 9, 2005 08:45 PM
ダウンタウン トタンアート
excerpt: 下町を歩くと、そこらじゅうで目にするのが波形のトタン板。屋根や壁などに貼られ、そのうえをブルーやグリーン、茶色やグレーなどの塗料で塗装してあります。その塗装面が年月とともに退色し、ひび割れ、部分的にめくれたり剥がれ落ち、錆びが出て、なんとも言えない渋い...
weblog: Kai-Wai 散策
comments

こんなかたちで切り返されるとは(^^; トタン板の茶目っ気って、聞いて初めてナルホドーと思いましたが、的確なご指摘ですね。GALVANIZED IRONでは、なんだか動物や植物を学名で呼んでるような不細工さを感じます。ところで、ブリキのほうは、確かオランダ語源だと聞きますね。

by: masa : July 7, 2005 01:38 PM

>masaさん
ども。茶目っ気が果たして適切だったかは私も何とも言えないところですが、
何ていうか、とにかく「味」ですよね。それがガルバ君には見えない。
だから一部の好事家たちのカメラは自ずと「味」に吸い寄せられて、トタン君にレンズを向けてしまうのだと思います(^^;)

by: m-louis : July 7, 2005 04:02 PM

なんだかか好事家の皆様が寄合いを開いておられますですね。

トタン板は通常「亜鉛鉄板」と言われ、新参者の「ガルバリウム」とは一線を画しています。建築用語辞典によれば galvanized sheet iron と、sheet が入っています。
「ブリキ」の由来は輸入されたレンガを縛っていた金属バンドのことを「それは何」って聞いたら、レンガのことを聞かれたと勘違いして「ブリック」という答え、それがブリキとなったと聞いています。

by: AKi : July 8, 2005 03:15 PM

>AKiさん
おぉ、また好事家が一人、現れましたね(^^;)
建築用語集によっては galvalium という訳でないものが出ているものもあるんですね。
しかし、sheet といったら「板」であって、そうすると別に亜鉛鉄板を「galvanized sheet iron」と言ってしまってもよい気がするのですが、判断が難しいところですね。

「ブリキ」と聞くとほとんど条件反射で「の太鼓」と付けたくなってしまいます(汗)

by: m-louis : July 9, 2005 01:29 AM

>AKiさん
ブリキという語にそんな由来があるとは知りませんでした。意外と雑かったりして、ある意味楽しいですね(^^;
galvanizedは本当に堅苦しいですが、ZINIC PLATE のほうは如何でしょう?これも同じトタンを指すのか否か、定かではありませんが…。辞書にはとりあえずトタンの訳語として記載されてますね。
トタンに比べると、ブリキ=TIN のほうは愛嬌がありますよね。

by: masa : July 9, 2005 08:34 PM

元トタン屋根研究者のhiraです。

むかし、「トタン張り茅葺き屋根」(造語)の論文(笑)を発表したときは、英文表記にzinic plateをつかいました。
「茅をトタンで隠し、さらにトタンは瓦風にみせかけているが、まだ茅葺きを瓦葺きに改変しない、という不思議な現象を引き起こしているのである。しかしながらトタンはトタンで発展してきており地方色もありそれなりに美しく新しい文化だといえる。」なんて書いてましたな。
(トタンを美しいなんて書いたから、いろいろ言われました。(笑)

by: hira : July 10, 2005 03:09 AM

>masaさん
TB謝謝!です。
TB元コメントでの<「錆」が「寂」を生む>ってのを読んで、これまで Flickr! の Your Tags に「SABI」を付けるか散々迷ってたんですが、付ける決心が付きました(笑)

>元トタン屋根研究者 hiraさん
僕は灰塚アースワークプロジェクトには1995年に初めて行ってるんですが、その頃はまだ何軒か残っていた茅葺き屋根の家が徐々に茅葺き型トタン化されていく風景を見てきました。
結局、茅葺きのための人手不足がトタン化の第一要因と灰塚の住民からは聞いてますが、ただ、そのとき、彼らがトタンと言わず、ガルバと言ってたのが妙に虚を突かれた気分になってました。今思えば、トタン(ガルバ)化して数年とはいえ、錆び掛けてる屋根を見た記憶がありません。やっぱりどこもガルバなのかな?(^^;)

by: m-louis : July 11, 2005 12:55 AM
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