March 01, 2005

標本系ブログ

子どもの頃、昆虫博士になりたいと思っていた私は祖父に教えられて昆虫の標本を覚え、あたり構わずそこいら中の虫を捕まえてきては発泡スチロールのケースにピンで刺し留めていた。それを夏休みの自由課題か何かで学校に持って行ったら、同クラスの女子から大顰蹙を買ってしまったのは今でも私の中でちょっとしたトラウマになっているが(昆虫少年はモテない)、それでもこうした標本化への意志とでもいうべき性向はなかなか変えられないもので、実際それは自身の「おらないがみ」という作品シリーズにも現れているし、世の中のそこかしこに点在している標本的なものに出くわすとつい過敏に反応してしまうものだ。

050301_kaiwai.gif先日、豊田さんからのメール追伸で「最近谷中近辺の方らしいのですが、ホームページを紹介されました。なかなか面白いHPです」ということで早速 URL をクリックしてみると「Kai-Wai散策」というブログで、主に本郷、湯島、池之端、谷中、根津、千駄木界隈を散策しながら気になったところをデジカメに納めてほぼ一日一エントリーのペースで淡々と記録されているものだった。コレ、言うまでもなく私の好みの標本スタイルブログなのである。「はじめに」といったブログ趣旨を紹介するエントリーすらされてないのがまた小気味よい。標本的であることがこれだけ徹底されていれば最早そうした説明など必要ないのである。

早速うちの近所が写っていた「ジオラマ上野桜木」というエントリーでコメント挨拶するとブログ制作者の masa さんはこちらのブログのことを既にご存知だったようで、私が谷中の住人ではなく大阪在住だから尚更こういうブログの存在がありがたいと話すと「もしも、どこか様子をお知りになりたい、などといったことがありましたら、大阪からリモートコントロールなさってください」と非常に嬉しいお返事をいただけた。
2/28(月) にはうちの裏手のアランさんのアトリエにも行かれてるようだし、そのうち我が家がギャラリーオープンさせたら、何喰わぬ顔した標本の一つとして紹介されることもあるかもしれない。さすがに自分の関係するところが標本の一部となるというのはこれまで標本する側だった者としては何ともこそばゆいマゾヒスティックな感覚になりそうな気もするが(笑)

ところで「ジオラマ上野桜木」のコメント欄では山田屋意匠堂という方が私よりも先にコメントされていて、その方のサイトを見るとこれがまた見事な標本系。「塔的な」物件、墓石・屋形・門柱タイプに分類された御名刺受、メメント・モジとどれも標本魂を擽られずにはいられぬものばかりが陳列(標本化)されていた。こちらも早速ブックマーク。唯一難癖付けるとしたら、御名刺受の写真もポップアップで大きいのも見られたらな〜といったところか?(※1)

と書いてて、危うく書き忘れそうになってることがあったのを思い出した。「Kai-Wai散策」の魅力には作者独自の視点を巧みに織り交ぜながらもこざっぱり纏めてしまえる手腕(ブログにおける1エントリーの文字数が最適な気がする)もさることながら、とにかく写真が素晴らしいのだ。同ブログ内でもリンク張られてるけど、「MasahiContax」の方も必見です。

□◇
※1)御名刺受の写真もポップアップで大きいのも見られたらな〜
後日、山田屋意匠堂さんとコンタクトを取る機会があり、大きな画像を見せられないのはプロバイダのサーバスペースの問題に拠るということが判明いたしました。それにしても山田屋意匠堂さん、これまた我が家のご近所さんのご様子です。


by m-louis : March 1, 2005 09:15 AM
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comments

「標本系ブログ」とはいいですね。私は、「標本」なんて言葉自体忘れているんじゃないかと思って、あぁ、そんな風に考えられるなって感心しました。私は昆虫採集とかは大嫌いだったのですが、BARRACK finder というカテゴリーで「採集」しております。
ご紹介になっている「Kai-Wai散策」の masa さんとは、「ブログの力」のパーティでお会いしました。写真が本当にすてきですね。

by: 秋山東一 : March 1, 2005 12:34 PM

m-louisさん、masaです。
僕の理想であるm-louisさんのこのサイトに、リンクどころか、単独エントリーとして紹介および過分な評価まで頂きまして、たいへん恐縮しています。本当にありがとうございました。
書籍「ブログの力」の推進力におなりになられた方々(建築家の方々が中心)やm-loiusさんのように、物を見抜く力と知識を兼ね備えていらっしゃる方々のブログには遠く及びませんが、今後も、自分のできる範囲をできるだけ押し広げながら、その範囲内で、こつこつとやって行こうと思っています。いつか、谷中の路地で、「あ、あのm-louisさんですか〜!」という日がやってくるまで、歩きつづけてみます。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

by: masa : March 1, 2005 07:13 PM

>秋山東一さん
幾度か別のところでも書いたことあるんですが、虫って著しく好き嫌いが分かれますね。嫌いな人は本当に嫌いで好きな人はちょっと危ないくらいに愛してる。私の場合、もちろんクワガタなどをペットとしても飼うんですが、標本化もそれはそれで別種の愛情の現れだと思ってます。が、それが一種の虐待として小学生時には顰蹙を買ってしまいました。

aki's STOCKTAKING のバラックカテゴリは楽しみなコンテンツの一つですが、そもそも STOCKTAKING というタイトル自体、標本に近似的というか、標本の一歩手前のような状態でしょうか。でも、そこに「成績」「内省」という意味づけが加わるのが面白いところです。
「ブログの力」出版パーティ、やっぱり出席したかったな〜(と、遠い)。

>masaさん
秋山さんのコメントポストしようとしたらちょうど masaさんからコメント。
いや〜、なんかちょっと褒めすぎで尻の穴が痒いです(笑)

『ブログの力』はこれまでのネット関連書籍とその出自がまるで異なるところが面白いところですが、よくよく考えてみれば建築系は自ずと町≒街と繋がりを持つので、そこからその採集+記録(標本)に適したブログへと展開するのは必然的成り行きだったのかもしれません。

実はこれまでにもブログを通して谷中のご近所さんとは偶然出くわしているのですが、masaさんともその機会を楽しみにしています。それと谷中という場所はそういう偶然出くわしてちょっとご飯でも食べましょっか〜ってのが多いようですね。

by: m-louis : March 1, 2005 07:33 PM

標本系ブログいいですね。M類さんも標本好きだったとは。私も、小さいころから、虫が好きというよりは、標本にたくさん並んでいるとか、色とかそんなのがおもしろくて、見るのが大好きでした。なので、昆虫学者のアトリエとか引き出しとかそういうのにぐっと来てしまいます。スイスの昆虫博物館で、一度見たある博士の展示がとても印象的でした。会場には蝶が舞っていたり。古ぼけた採集道具とか。熊楠に惚れ込んでいるのもわかりますよね…。
紹介されている「Kai-Wai 散策」しばらく近くに滞在するので、ゆっくり読もうと思います。

by: mitsubako : March 8, 2005 10:14 AM

>mitsubakoさん
突然ですが、明日から行くことになりました。
でも、実家絡みの用が盛りだくさんで今回は散策の時間はまったくなさそうです(泪)
それとI氏からも連絡あり、練馬美術館には行くことになりました。これが唯一の娯楽か?という感じです。

by: m-louis : March 9, 2005 03:17 AM

昨日から、谷中にいます。外国では、しばらく滞在ということをしたけれど、国内でこういうことをするのは灰塚以来ですね。ちょっと引越しとは違うおもしろさがあります。魚膳という店行ったことありますか?気になってます。
ではバッタリ会えれば。。。練馬私も行きたいなぁ。日曜に行けるか?!

by: mitsubako : March 9, 2005 10:17 AM

>mitsubakoさん
結局バッタリは出来ませんでした。残念。
何だか実家に行くといつもやることだらけで、思いの外、自由な時間も散策する時間も作れません。ところで国内での「しばらく滞在」といえば mitsubakoさんにも英訳をお手伝いいただいた「こんにちわテント」の小川てつオ氏のことが想起されます。
http://www.m-louis.jpn.org/tent/
相変わらず居候ライフを続けているようです。
http://welcome.to/isourou
それと谷中にも時折出没している模様。
http://d.hatena.ne.jp/lislen/20040920

by: m-louis : March 14, 2005 05:21 AM
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