September 28, 2004

第31回打合せ: 光庭

光庭についてはこれまでも「光庭考」という形で幾度か自分自身の考え方や豊田さんとのメールのやりとりで考えられたことなどをブログ上でエントリーしてきたが、今回の打合せで豊田さんが描いた具体的な光庭イメージのスケッチを見せられ、「何とここまでやろうとしてられたのか〜、さすがは坪庭開拓団の団長さん!」と改めて思わずにはいられなくなってしまった。というか、こんだけの仕事して「基本的に植栽整備作業は団員による無償作業を理念として」いいのだろうか?という感じ(^^;) まあ、それはともかくまずはその具体案平面図を以下に(クリックで拡大可)。

正直言って私はここまでしっかりしたものは考えていなかった。
第31回打合せの打合せ記録(※) で「石垣で土留めをして、奥を少し高くする」とあるが、濡れ縁降りてまずは砂利敷、そして石で土留めして2段目は苔をメインに小植物を石のまわりに絡ませ、3段目に灯籠といった階段状の3段構成。こうした高低差を段階的に設けることでピアノ室からも灯籠が見えるようにした上で、もう一つの狙いはこの元々小さな空間をさらに浅く見せてしまうこと。そうすることで借景となるA見邸の樹木がぐんとこちらに引き寄せられ、云わばうちの庭と連続してるように見えてくる。

ただ、とはいえ、盛り土が高くなるとそれはこちらにはよくてもA見邸側からはそこに立たれれば塀越しに覗かれるという決して気分のよいものではなくなってしまう。そこで現在のブロック塀を覆う形で右図のような板塀を付けてやるというわけだ。塗装は一乗寺側室内壁面と同じオスモカラー。材も同じく杉板でよいのでは?とのこと。そして実際に張る板自体は背後のブロック塀と高さは揃えるがその上に簡易な庇みたいなものを幾本かの小柱の上に渡して載せる。その分の高さによって感覚的に覗かれてる意識は和らげられ、且つ軒下に隙間ができるので風通しを遮られたという印象も薄れる。この覆い塀の作成は発注でも自前制作でもいいけどと言われていたけど、出来ることなら DIY で行きたい(まあ、問題は私の時間だね)。

植栽は2つの点で面白いアイデアが出ている。私個人は漠然と灯籠の背後に少し丈のある樹木をなんて考えていたが、豊田さんはどちらかというと逆で、向かって右手一番手前に少し背のある笹類、そして左手端の狭くなったところに背後の塀が見えなくなるくらいの大きな植物を茂らせ、石垣2段目3段目灯籠回りの中央部をシダフキギボウシ等の小さな陰性植物たちで賑わせる考え方なのだ。そしてこの考え方が先のA見邸を如何様に借景とするかを基軸としたものであることはすぐに理解できたので、当然私の漠然とした考えなどはあっさりすっ飛んだ。

それともう一つの面白いアイデアが一乗寺側壁面をヘデラ等の蔦類で覆うという考えである。私個人は一乗寺の4mある壁をそれほど鬱陶しくは思っていないが、設計者として日常生活を営む者の視点に立ったときにはそれを遠ざけたいと思うものなのかもしれない。4mもあるだけにそこをヘデラが這うという絵も私には好ましく思え、即座に了解した。自邸を実験台としてタンポポ・ハウスを建てた藤森照信氏が本当にやりたいのは新宿副都心の都庁ツインビルを天辺まで蔦で這わせ、緑ですっぽり包むことだそうだが、そうした野蛮さには基本的に心が疼く私なのである。
ちなみに豊田さんが候補にあげてるヘデラってのはどちらかというと西洋系の植物で、それと灯籠や苔が組み合わさると奇妙な和洋混在状態になっていく可能性がある。でも、もともと1F室内も屏風『壁畫に集ふ』の主題も皆和洋混在。だから構いませんよね?と豊田さんは冗談めかして言われていたが、無論その方が歓迎である。

しかし、豊田さんの平面スケッチ見てるとなんだかとっても大きな立派な庭のように見えてきちゃうんだよね。実際にはホント坪庭というのがぴったりな程度の小庭なんですが、、一応、再度ここで上から見下ろして撮影した画像を左に掲載しておこう。
それとそうそう、「光庭考(※)」のエントリー最後で書いていた「なぜに豊田さんが<光庭>という言葉を使ったか」だが、特に深い企図があってのことではなかったようで、ただ、坪庭っていうと家の中にある庭のイメージだし、裏庭って言ってしまうとちょっと寂しいし、、ということで、光が落ちてくる庭ということでの<光庭>だったそうだ。
それと最後に今回アップしてるスケッチ画像だが、色の付いてる方の立面イメージ図については豊田さんが繰り返し「これは雑にスケッチしただけですので」と言われていたことを補足しておく。


by m-louis : September 28, 2004 04:56 PM
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