のんびりペースとはいえ、あんまり律儀に芸工展巡りでの企画紹介ばかりしていると、さすがに書く方も飽きてくる。ということで、今回は芸工展巡りの最中に見つけた柿の写真でもアップしよう。この柿は大名時計博物館前の通りからあかぢ坂を下りて程なくのところにあるアパートの塀の上に、無造作にというよりはどちらかというと造作的な感じで置かれていた。※註・追記≫下の写真をご覧になるとわかるだろうが、一部囓られた痕があり、ひょっとすると住人が鳥の餌にでもと置いておいたのかもしれない。
柿といえば、学生時代に漫画『美味しんぼ』で柿の甘みが菓子の原点にあるという話を読み囓った覚えがあった。早速ググってみると第26巻「菓子対決(前)」にその話は出ていた。リンク先(夜刊ロロモ)にはその巻の仔細なあらすじが掲載されているので、興味を持たれた方は同ページ4〜5章をご覧になられると良いだろう。
現代のお菓子の大半は甘みを砂糖に頼っているが、18世紀以前の日本では砂糖が高価で庶民の手に簡単には入らず、甘みへの欲求は果物によって満たされていた。上記あらすじから暫く引用してみると「菓子の菓と果実の果は同じ、木になった果物のこと」「すなわち、菓子とはもともと果物のことだったのだ」というように、その語義自体に菓子のルーツが隠されていて「中でも柿は日本独特の物」「ほかの果物と違って干し柿として保存がきくので貴重だった」として、海原雄山に「水菓子としての果物といわゆる菓子の中間点、いわば菓子の原型として考えられるのが干し柿」では?と結論づけられている。
そういえば韓国ドラマ『宮廷女官チャングムの誓い』でも、第5話「変革」で子供時代のチャングムが料理の隠し味に熟した柿が使われていることを一人言い当てるシーンがあるのだが、朝鮮王朝時代の韓国料理においても甘みを引き出すのに柿が使われていたという点では日本と同様のようである。余談だが、「なぜ、柿だと思う」と最高尚宮に聞かれ、「食べた時に柿の味がしたから、柿だと言ったので、なぜ柿かと聞かれても柿の味がしたからだと」子チャングムが答えるこのシーンが私は無性に好きでたまらない。
【写真上・中】2006.10.18 15:49, 台東区谷中・あかじ坂にて
【写真下】2006.11.11 13:41, 滋賀県高島市新旭町・正傳寺鐘つき堂の干し柿
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